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「弓と禅」を読んでみた

2024.10.06

こんにちは。|平屋|スタンドバイホーム長岡 代表の間嶋です。

ずいぶんと朝晩は涼しくなり、秋のはじまりを感じます。◯◯の秋とよく言いますが、皆さんはどの様に秋を過ごされますか?

今回は読書の秋ということで一冊の本をご紹介します。良い本は向こうからやってくることがあります。自分から探すのではなく、誰かから薦められたり、たまたま書店で目に入ったり、ニュースレターで紹介されていたり。不思議ですが経験上何度かあります。

弓道を習っている知人がいます。先日、「弓と禅」という本を紹介されました。著者はオイゲン・ヘリゲルというドイツの哲学者です。

表紙のデザインもシンプルかつシャープで非常に良いです。

ヘリゲルさんは、1924年に今の東北帝国大学に哲学の講師として招かれました。来日して間もなく、弓道界では有名な阿波研造師範の弟子入りをすることになります。それから5年間の弓道体験を書き綴った本となっていますが、写実的な表現はほとんどなく、ほとんどが心理描写です。しかも抽象的で難解な文章です。目次は次のようになっています。

序言
1.精神的な弓道、その師範との出会い
2.弟子入り
3.呼吸法
4.放れ
5.自己自身からの離脱
6.師と弟子
7.有心と無心
8.暗中の的
9.段級審査
10.諸芸の名人境
むすび

一部を引用してみます。「4.放れ」の章で、ヘリゲルさんが上達の壁に苦しんでいると、師範が次の様に言葉をかけます。
「それはただ、あなたが本当に自分自身から離脱していないためです。このことを感じとりなさい。それはしごく簡単なことです。要点はありふれた竹の笹から学べます。雪の重味で笹は次第に低く圧し下げられる。突然積った雪が滑り落ちる、が笹は動かないのです。この笹のように一杯に引き絞って満を持していなさい。射が落ちてくるまで。実際射とはそんなものです。引き絞りが充実されると、射は落ちねばなりません。積もった雪が竹の笹から落ちるように、射は射手が射放そうと考えぬうちに自ら落ちて来なければならないのです。」(p85~86)

師範の言葉は全部この様な内容です。呼吸を整えなさい。力を抜きなさい。無我になりなさい。稽古しなさい。射るのは射者ではなく「それ」。悪い射に腹を立ててはならない。善い射に喜ばない。などなど、師範の教えが余す所なく書き連ねてあります。そしてそれは抽象的ですが示唆に富んでいます。弓道は未経験ですし、わからないことだらけですが、読みながら考えることは沢山ありました。

この本は、禅に通ずる本として西洋では有名で、スティーブ・ジョブズの書棚にもあったそうです。本編は133ページほどの本です。難解ではありますが面白い本でした。興味のある方は是非お手にとって読んでみてください。

読書の時間が取れないという方は、武田鉄矢がこの本を紹介したラジオ番組の録音がYouTubeにあります。よくまとめられていますし、とても面白く解説されています。これを聞いたら本を読まないわけにはいかなくなりますよ(^^)
「武田鉄矢 今朝の三枚おろし 弓と禅」

コスパ、タイパ、合理性、論理的、効率、生産性、経済性、今の社会はとにかく忙しないです。結果を求められます。より早さを求められます。

先日、ある社長さんとマニュアルの話になりました。
「マニュアルが絶対的に必要で、マニュアルによって短期間で一定の品質になる。」と主張する後継者さん。
「マニュアルも必要だが、それ以前に良く見る(観察する)ことが大事だ。」と主張する社長さん。
「見て覚えるとか、前近代的で時間がかかり過ぎる。」と反論され、ちょっとしたバトルになったということです。

どちらの主張も間違ってはおらず、マニュアルにも当然メリットとデメリットがあります。

マニュアルには限界があり、マニュアルに頼り切るとそれ以上のことは考えなくなるし、できなくなると私も考えます。
一方で観察は、自身で見て考えることで、継続的な向上の可能性が開けます。本人の資質にもよりますが。

経済社会では、極めなくても良いので、程々の品質で程々の価格で速やかに提供されることを望まれることがあります。一例として、回転寿司です。良いか悪いかは別として、需要が確実にあります。

技術の進歩や様々なアイディアによって、社会は良くなり生活は豊になると信じていますが、次から次へと新たな社会問題が発生し、全体として問題がなくなることはありません。

そういった世界から一時的にでも離脱して、無我の境地に身を置くことが今こそ大事なことなのかもしれません。
現代社会を批判するつもりはありません。シャワートイレのない時代には戻りたくありませんから。(笑)

おわり